高齢者の健康を守る室温管理について

高齢者は体温調節機能が加齢と共に低下しています。これは、脳の視床下部という体温調節センサーのような部分の感度が弱くなっていることが原因であり、暑くても寒くても、それを認識することができなくなってしまっているからです。また、高齢者は体内の水分が若い人に比べて少なくなっており、発汗そのものも減っていることから、体内の熱を逃がしにくくなり、熱中症になりやすいと言われています。したがって、介護の現場では、高齢者のこういった特性を折り込んで、生活スペースの温度管理を行わなくてはならないのです。

例えば、高齢者から「暑い」といった訴えがなくても、軽い運動をするときは、あらかじめ設定温度を通常よりもすこし低くしておくような対策が必要です。また、寒い日には、高齢者は重ね着をしたり、布団や毛布をかぶるなどの方法で寒さを乗り切ろうとすることがありますが、それでは活動性が低下してしまうので、静脈血栓症のリスクが上がってしまいます。ですから、夏でも冬でも、一年を通して住環境は同じくらいの活動性を維持できるような室温にして利用者に過ごしてもらうことが介護の現場では重要です。室温管理で役立つ機器については、【丁寧な温度・湿度管理で高齢者を守ろう】で触れられているので、ぜひチェックしてみてください。

それから、浴室など温かい環境から室温の寒いところへ移動するなど、温度変化の大きいところでは、高齢者は上手く対応できないことがあります。入浴中に脳血管障害が発生する確率が高いのは、急激な温度の変化が高齢者の健康上にあまり良くないことを証明しています。ですから、寒い日の浴室や脱衣所の室温管理では、利用前にあらかじめしっかり部屋を暖めておくなどの対策をすることが、致命的なトラブルを防ぐことにつながります。